相続税の税務調査の流れ
1 税務調査の流れは税目等によって異なる
税務調査の流れは、税目によっても異なりますし、何が問題になっているかによっても異なってきます。
このため、ここでは、あくまでも一例として、相続税の税務調査の流れを説明したいと思います。
2 事前の調査
申告書を提出すると、税務署は、申告書の内容を精査します。
また、実地調査を行う前に、事前に、金融機関等から、客観的資料の取り寄せを行い、申告漏れの有無について、ある程度の情報を得ていると考えられます。
たとえば、相続税の場合、被相続人から相続人に対して贈与された財産があるかどうかが問題になることが多いです。
この点についての資料を得るため、預貯金や有価証券については、被相続人名義の取引の履歴だけでなく、相続人や相続人の配偶者、相続人の子名義の取引の履歴も取り寄せます。
そして、これらの履歴を照らし合わせ、被相続人から相続人や相続人の家族に移転している財産がないかを確認します。
他には、相続税の場合、被相続人が形成した財産で、相続人や相続人の家族の名義になっているもの(いわゆる名義預金、名義株)があるかどうかが問題になることが多いです。
この点についての資料を得るため、被相続人の金融機関や証券会社に問い合わせを行い、届出された住所がどこになっているか、届出印が誰のものになっているかの調査がなされます。
このように、実地調査が行われる前段階で、税務署は、かなりの客観的資料を取得していることが多いと考えられます。
3 実地調査の日程調整
次に、税務署から、実地調査の日程調整の連絡がなされます。
実地調査について、何月何日の何時に開始するかの調整がなされます。
実地調査の場所は、被相続人の自宅であることが多いですが、相続人の自宅であることもあります。
このとき、調査官が自動車で移動することを予定している場合は、自宅に駐車場があるかどうかの確認がなされることが多いです。
なお、税理士がいわゆる書面添付を行っている場合は、調査前に税務署からの意見聴取がなされます。
意見聴取によって疑問が解消される場合には、実地調査に移行せずに終了することもあります。
4 実地調査
日程調整を行った日時に、調査官が自宅まで赴き、実地調査がなされます。
調査官は、通常、2人で訪れます。
2人のうち、1人は、主として、相続人に対する質問を行い、もう1人は、主として、メモを取ったり、記録を残したりします。
また、複数人で調査を行うことにより、相続人の受け答えの内容、様子を綿密にチェックするという目的もあります。
調査では、調査官から、相続人に対し、様々な質問がなされます。
一見、関係のない質問に見えて、実は、決定的な質問がなされることもありますので、事実に基づき、きちんと注意して回答する必要があります。
特に、○○を知っていますかという質問は、後述のとおり、相続人の認識を確認するためのものであることがあり、要注意です。
この過程で、自宅で保管している資料の提示を求められることもあります。
たとえば、調査官から定期預金証書の提示を求められたところ、被相続人の金庫から定期預金証書を取り出すところを現認され、調査官から、その定期預金証書を管理していたのが被相続人ではなかったのかとの追及がなされるといったこともあります。
このように、資料の提示1つをとっても、注意が必要です。
また、特定の場所を見せてほしいとの要請がなされることもあります。
たとえば、金庫の中を確認したいとの話があったため、金庫内を見せたところ、名義預金についてのメモが発見され、追徴がなされたという例もあります。
調査は、午前だけで終わる場合もありますが、丸1日かかることもあります。
丸1日かかる場合は、一旦、昼食時に中断し、午後に再開することとなります。
実地調査の途中に、質問調書への署名を求められることがあります。
調査官からは、調査の過程を記録するための書類であるとの説明がなされることが多いです。
他方で、質問調書は、相続人の認識している事項を客観的に記録するという側面もあります。
たとえば、申告書で記載が漏れていた財産について、質問調書では、相続人が存在を認識していたとの記載がなされると、後日、質問調書の記載に基づいて、意図的に相続人が財産を隠して申告したとの指摘がなされ、重加算税の課税がなされることもあります。
質問調書にどのような記載を行うかについては、細心の注意を払う必要があります。
5 修正申告
実地調査の完了後、当初の申告内容を修正し、追加で納付を行うべきかどうかについて、税務署の側で検討がなされます。
当初の申告内容を修正する必要がない場合は、調査は終了したとの連絡がなされることとなります。
当初の申告内容を修正する必要がある場合は、実地調査の完了後、何日かあとに、税務署に来てほしいとの話がなされます。
税務署へ赴くと、税務調査の結果を踏まえ、どのような申告を行うべきかという話がなされることが多いです。
この話を踏まえ、税務署が想定する修正後の申告内容に異議がなければ、修正申告を行い、追加の納付を行うこととなります。
この場合、過少申告加算税、延滞税の納付の必要も生じることがあります。
本税のみについて追加の納付を行った場合は、後日、税務署から、過少申告加算税の納付書、延滞税の納付書が届きますので、これらの納付を行います。
税務署が想定する修正後の申告内容に異議がある場合は、税務署が更正処分を行い、税務署側の判断で課税がなされることとなります。
更正処分の内容を争う場合は、審査請求や税務訴訟の手続に移行していくこととなります。
税務調査の内容と税理士の役割 株取引を行っている場合の確定申告