遺留分と相続税
1 遺留分と相続税の関係
遺留分を請求する場合にも、相続税が問題になることがあります。
以下では、遺留分を請求する段階毎に、どのように相続税の問題が生じてくるかを説明したいと思います。
2 遺留分の請求を行った段階
遺留分は、遺言により財産を取得した人に対して、遺留分の権利を行使するという意思表示を行うことから始まります。
当初から、金額を特定して、●円の支払を求めるとの意思を示すこともありますが、最初は、遺留分の権利を行使するとの意思表示だけしておき、その後、相続財産の調査を行った上で、金額を特定し、●円の支払を求めるとの意思を示すこともあります。
このように、遺留分の権利を行使するとの意思表示を行っただけの段階では、遺留分を請求した人に対して、相続税が課税されることはないと考えられています。
また、金額を特定し、●円の支払を求めるとの意思を示した段階でも、相続税が課税されることはないと考えられています。
3 遺留分の額が確定した段階
遺留分の請求を行うと、遺言によって財産を取得した人と遺留分を請求した人との間で、交渉がなされることとなります。
交渉で解決できない場合は、家庭裁判所での調停へ移行したり、地方裁判所での訴訟へ移行したりします。
こうした過程で、当事者間の話し合いが成立すれば、遺留分の額が確定されることとなります。
話し合いが成立しない場合には、裁判所が判決を行い、これが確定することにより、遺留分の額が確定されることとなります。
このように、遺留分の額が確定した段階で、遺言によって財産を取得した人は、遺留分だけ取得する財産が減少することとなりますので、確定してから4か月以内であれば、更正の請求を行うことにより、相続税が還付されることとなります。
その後、税務署は、遺留分を請求した人に対して、更正処分により、相続税の納付を求めますので、相続税を納付しなければならなくなります。
他方、遺言によって財産を取得した人が更正の請求を行い、相続税の還付を受けることがなければ、遺留分を請求した人に対して、更正処分がなされることはありません。
遺留分を請求した人からも、相続税の申告・納付を行う必要はありません。
この場合は、遺言によって財産を取得した人と遺留分を請求した人との間で直接話し合い、相続税の精算がなされることもあります。
ただ、遺留分を請求した人は、自分から、遺留分に基づいて取得した財産について、相続税の申告・納付を行うこともできます。
この場合は、理屈上は、いつ申告を行っても良いと考えられています。
ただ、申告書を提出すると、その時点で納付の期限が到来したものと扱われてしまいますので、その後に納付を行うと、延滞税が課税されることとなってしまいます。
延滞税の課税を避けるためには、申告と同日に納付を行うか、申告に先立って納付を行う必要がありますので、注意が必要です。
4 税理士への相談
このように、遺留分を請求した場合の相続税のルールは複雑であり、誤解も多いです。
遺留分を請求した場合の相続税については、税理士にご相談いただいた方が良いでしょう。